ご挨拶
一般社団法人特殊鋼倶楽部
会長 藤岡 高広
2021年5月の一般社団法人特殊鋼倶楽部の総会、理事会で、前任の樋口山陽特殊製鋼株式会社社長の後を受け、第18代会長に選任されました愛知製鋼株式会社社長の藤岡高広です。
特殊鋼倶楽部は、2013年4月に一般社団法人に移行後、私は、2015年5月から2年間会長を務めさせていただき、今回は2回目の会長就任と身の引き締まる思いです。
会長としての基本的な思いは、「我が国特殊鋼の競争力の向上」を目指した活動を行って参りたいという点です。
言うまでもなく特殊鋼は、最先端技術の「粋」であり、鉄鋼材料の中で独特の高い機能を有する材料で、粗鋼生産の20%強を占め、自動車をはじめとする輸送機器や産業機械、建設機械、工作機械等、幅広い産業分野の中核部品材料として使われています。特に自動車等の性能・安全性を支える重要保安部品に加え、最終製品や部品の製造工程における性能やコスト削減の鍵を握る加工性をも左右し、我が国の製造業の競争力の根本を支える重要な素材です。また家庭においてもキッチンや器具では広くステンレス鋼が使われるなど国民経済生活と密接な関わり合いを持つものであり、静脈産業である特殊鋼業のレベルが国民経済を支えています。
しかしながら、我が国の特殊鋼業界を巡る環境は、需要面では国内市場の縮小・構造変化、供給面では、製造コストの増大、海外特殊鋼メーカーや他素材との競合激化など厳しい状況にあります。既存のマーケットが縮小し浸食されることが避けられない今こそ、我々が長年磨きをかけてきたもの、品質、開発力、提案力やそれら技術を中核としたお客様との信頼関係、これらの真価がこれまで以上に問われる時が来たと考えるべきです。「Return to the basic with Innovative Manner」(今までとは違う発想で「原点回帰」し、より挑戦的に新しい価値に取り組む)で、長年のお客様、新しいお客様に「選ばれる特殊鋼(Special Steel of Choice)」となりたいと思います。
第1回目の2015年の私の会長就任の際には、「選ばれる特殊鋼」を目指して、「特殊鋼のPR強化」、「製造業者会員と販売業者会員の連携・協力強化」、「国際問題への対応」という3点に特に注力する旨お話し、着実に一歩ずつ実行して参りました。これらは今後も重要な点であり、引き続き実施する所存ですが、今回は最近の社会経済情勢を踏まえ、特殊鋼倶楽部会長として2つの事に特に力を入れていきたいと考えております。すなわち「カーボンニュートラルへの取組」、「DX 推進のための一環としてミルシートの電子化拡大を念頭に課題を整理する」の2点であります。
2020年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。特殊鋼倶楽部としても、「カーボンニュートラルに関する推進グループ」(仮称)を立ち上げ、各社の技術開発等の取組について情報交換・共有化等を行い、特殊鋼倶楽部として取りまとめ、その上で今後の取組について情報発信をしていくこととして参りたいと考えております。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するにあたり、EDI(電子データ交換)を更に推進することが大きな課題となっております。そのためにはミルシートの電子化に向けた取り組みが必要と言われておりますが、特殊鋼会社と流通関係者とで「ミルシートの電子化拡大に関する検討グループ」(仮称)を立ち上げ、電子化拡大を念頭に課題を整理し、その結果を発信することとしたいと考えております。
特殊鋼倶楽部は、1952年に設立され、特殊鋼流通の円滑化と需要拡大という共通目標実現に向け、現時点でメーカー25社、流通・販売業者103社からなる製販一体の団体であります。以上述べましたように、「我が国特殊鋼の競争力の強化」のため、広報や統計など、基盤的な事業を着実に実施しながら、特殊鋼業界の直面するカーボンニュートラルへの対応、ミルシートのユーザー側まで考慮に入れた電子化等の課題に対して、製販一体の団体であるという特徴を最大限に活かしながら、メーカー会員・流通会員が連携・協力して取り組んでいくことが必要と考えております。そのための基盤を提供すべく努力してまいりますので、皆様からの特殊鋼倶楽部及びその会員各社へのご支援をお願い申し上げます。
(2023年5月31日)