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ご挨拶

一般社団法人特殊鋼倶楽部
会長 樋口 眞哉

 2019年5月の一般社団法人特殊鋼倶楽部第38回定時総会、理事会で、前任の石黒大同特殊鋼株式会社社長の後を受け、会長に選任されました山陽特殊製鋼株式会社社長の樋口眞哉です。

 石黒前会長は、「日本のものづくりを特殊鋼が支えている」との我々の思いを広く伝えていくことが当倶楽部の使命と述べてこられましたが、私も、「特殊鋼の本当の価値」を、①ユーザー業界、②学生など一般社会、③外国政府も含めた海外に、広く認知して頂けるよう努めていく所存です。

 ご案内のとおり、特殊鋼は、最先端技術の「粋」です。国語辞典を開きますと、「特殊」には「限られた若干のものだけにいえること」という意味と、「平均的なものを超えていること」という意味があります。日本の特殊鋼は、正しく「平均的なものを超えている」鋼です。

 今年は令和元年ですが、平成を振り返りますと、我が国における特殊鋼の熱延鋼材生産量は、平成元年は1,590万トンでしたが、平成30年は2,080万トンと3割増えています。決して「限られた若干のもの」ではなく、我が国の製造業の競争力の根本を支える成長産業です。

 我が国特殊鋼業は、自動車等のユーザーと共同で開発を行い、品質の素材への「つくり込み」によって、加工コスト削減、軽量化等を実現してきましたが、海外では、このような直接協力は、一般的ではありません。ユーザーのニーズに応えて日本の特殊鋼業は技術・品質・サービスを高め、その特殊鋼を用いたユーザーが世界市場で繁栄する関係が機能してきました。一方で、電極などの副資材価格や物流価格の高騰等、我々特殊鋼業界を取り巻くコスト事情は大変厳しく、増収減益という状況下にあります。主要設備が老朽化してくる中、上記のユーザーとのwin-win関係を維持していくために、再生産可能な水準の収益確保が必要です。そのためにも、サプライチェーン全体での「特殊鋼の本当の価値」の理解を深めていきたいと思います。

 人手不足も深刻な問題です。学生など一般社会にとっては、特殊鋼そのものが知られていない場合も多く、知っていても成熟産業、衰退産業とのイメージなのではないでしょうか。上述の通り、特殊鋼は成長産業ですし、我々が連携していけば特殊鋼の未来は明るいと思っています。平成の30年間、更には昭和の時代も含め、我が国特殊鋼業は、世界一の技術水準を維持し、主要な外貨獲得産業であり続けてきた「しぶとい産業」です。我々も特殊鋼の性能を生かしきれていない面が多々あり、日夜、開発・改良を続けていますが、まだまだ技術的にも発展の余地があります。こういった「特殊鋼の本当の価値」を、学生など一般社会に伝える必要があります。

 米国が鉄鋼に25%の輸入関税を課し、また、米中貿易摩擦が激化し、世界的に保護貿易的な動きが相次いでいます。しかしながら、日本の特殊鋼は、輸入国の国内産業では製造できない高性能・高付加価値の製品で、輸入国の国内産品と競合しておらず、輸入関税が課せられると、輸入国のユーザー産業の競争力を損なうことになります。通商問題にしっかり対応し、海外でも日本の「特殊鋼の本当の価値」を正しく理解してもらうことがより重要となっています。

 特殊鋼倶楽部は、1952年に設立され、特殊鋼流通の円滑化と需要の拡大という共通目標達成に向けた、メーカーと販売業者が平等の資格の合同組織です。特殊鋼業界の直面する課題の中で、個社では対応が難しい課題、一企業ではなし得ないことに、特殊鋼倶楽部として、会員が連携、協力して取り組んでいくことが必要と考えております。皆様からの特殊鋼倶楽部及びその会員各社へのご支援をお願い申し上げます。


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